コラム

俯瞰力の重要性

俯瞰力の概要

俯瞰とは?」の記事でも書いた俯瞰力、今回はこちらが何に役立つのかを解説していきます。
私が実際に俯瞰力を活用し出したのはそろそろ課長昇進が見えてきた係長時代の終わりのころでした。それまでは、あまり気にしなかったスキルの一つです。会社での仕事は、若いころは所属する部門内の1つのセクション(課)の中で行うことが多いですよね。会社によっては係までブレークダウンしてさらに業務の範囲が絞られているという状況も多くあります。自分の仕事の範囲が限定されている状況の中では、それほどこの俯瞰力を使わなくてもこなせる業務は多いです。
しかし、係長を数年経験していたころに次世代リーダーを早期に育成する社内選抜研修に選ばれたことがきっかけで、俯瞰力の必要性を知ることになりました。会社が準備した研修と係長というタイミング。つまり、会社としても係長から課長に昇進する際にはこのスキルを知っておく必要があるというメッセージを発信したという事が分かります。
良く仕事の幅を広げるとありますが、俯瞰力はまさにこれで、自分の仕事の範囲を少し拡大して他の仕事との関連を念頭に置いたり、部門間、セクション間の狭間に落ちて見落としがちな要素を事前に洗い出すことが出来ます。さらには自分の業務と関連する業務については、聞いたことがある方も多いと思いますが、「バリューチェーン」を通して解決に導くことにも気が付くなど、業務の範囲をあらかじめ拡大して解釈することで、アクションに入る前にタスクの洗い出しと部門間調整ポイントが見えてくるという効果が期待できる。そういった便利なスキルが「俯瞰力」というわけです。

 

なぜ俯瞰力は重要なのか?

私が実際に仕事を行う上で、俯瞰力が重要だと考え始めたのは課長に昇進したときでした。課長になると組織の課題を展開して解決することが求められるようになったり、他部署と連携したプロジェクトを担当する機会が増えてきます。特に後者、他部門と連携したプロジェクトを担当したりする場合に俯瞰力は非常に重要になってきます。
課題設定とは?」や「課題設定力の重要性」の記事で課題設定について説明しましたが、俯瞰力は、この「課題設定」と組み合わせて使う事で非常に有効な力を発揮します。
何が有効なのかというと、例えば私が所属している開発部門は、商品の企画書を商品企画部門から受け取った後に開発が始まり、開発が終了すると、生産部門に技術が移管されるという流れになっています。この場合、開発に所属しているからと言って開発の担当範囲の中だけで課題設定を行うと、開発の担当範囲の課題を設定することは可能になりますが、商品企画部門や生産部門の課題は当然ですが出てきません。また、開発の範囲だけで課題設定すると実は後々抜け漏れが発生するような事にもつながる可能性があります。商品企画部門や生産部門の課題まで抽出しておきたいのであれば、その範囲まで含めて課題設定を行う事で開発の範囲以外の課題も事前に抽出することが出来るようになります。このように会社としては部門やセクションごとに担当する業務内容は異なりますが、事業計画上つながりを持つような同じ目的を実現するために活動を行うケースでの課題を抽出することに役立ちます。このように、全体計画を策定したり、計画の抜け漏れを無くす上で課題設定力とセットで活用することで俯瞰力は非常に重要になってくるという事です。

 

俯瞰力による効果

俯瞰力による効果を事例をもとに解説していきたいと思います。
俯瞰力は課題設定を行う範囲を見定めるためのツールと捉えると理解が深まります。先ほどの話を例に説明していきます。

係長時代の俯瞰力

例えば、モノづくりのプロセスで考えた時、下図のように企画と開発の範囲だけで課題設定するとします。当時の私は俯瞰力もそれほど持ち合わせておらず、自分の担当範囲の開発さえ上手く行けば良いと考えていましたし、それが仕事だと思っていました。要求をインプットする企画部門とは、企画書に記載する商品の仕様や機能について事前に認識合わせを行っていたので、企画と開発の範囲までは少なくともカバーは出来ていました。しかし、この俯瞰力で開発を進めた時に色々と問題が発生しました。

どのような問題が起こったかというと、開発の終了段階に近づいた時でした。商品のプロトタイプも完成に近づいており、開発内のテストも全て完了していました。あとは生産部門に工程移行するだけという事で生産部門との打合せを行ったのです。するとそこで初めて突発的に発生する作業が出てきたのです。例えば、生産に必要な組み立て手順書の準備が不十分であったり、生産時に組み立て調整を行うソフトウェアが必要だったりと、技術を移管する際、移管した後に生産工程で使用するツールなどについても開発から情報を出したり準備する必要があったのです。また市場導入が近づくにつれて、今度はサポート部門から現場でサービスサポートができるように教育観点での技術移管をしてほしいといった話や、サポートするためのサービスマニュアルを作るので情報を出してほしいなど、こちらも後から色々と突発的な作業が発生して市場導入完了するまでに、後手後手で何とかリリースに漕ぎつけたという経験をすることになりました。
全体を俯瞰せずに特定の範囲だけで課題設定を行うと、俯瞰していない範囲の作業が後から突発的に発生し、余裕を持った行動も出来なくなってしまったのです。

課長時代の俯瞰力

係長時代の失敗も活きたところや会社の選抜研修で習った俯瞰力や課題設定のおかげというのもありますが、課長時代には開発という視点ではなく、「事業活動の中の開発」という範囲で課題設定を行いました。

視座を上げる事で、事業活動に必要となる課題が計画展開段階から見える化することが出来るようになりました。また、見える化した計画やマイルストンを関しては、関連部門と事前に調整を行うことが出来るので、各マイルストンの達成基準なども事前に意識合わせがしっかりとできるようになりました。これにより事業活動上の開発フェーズをうまくマネジメントすることが可能になりました。

 

まとめ

このように俯瞰力とは自分が関わる仕事などを実行していくうえで、ゴールを設定する範囲を的確に捉える力と考えることが出来ます。また、課題設定と合わせて使う事で、課題設定を行う範囲を特定するために使うことで、物事をより進めやすくすることが出来るといった効果もあります。
バリューチェーンに限らず自分が関わる仕事や日常の出来事の前後工程ではどういった事象が発生しているのか?また、自分の仕事ややろうとしている事柄と関連性の有無を整理していくと俯瞰力を高める事が出来るようになります。前後関係を整理する以外にも、現状の仕事を漫然と受け止めて進めるのではなく、「何のために?」、「誰のために?」、「なぜ実施するのか?」といった本質を考えていくことでも俯瞰力を高める事が可能となります。
こちらの視点も課長クラスになると必須のスキルとなってきます。できれば初級マネージャーになる30代前半~35歳くらいまでには視座を高めて俯瞰力を使い始めておきたいところです。

-コラム
-,

© 2025 人生の転機